「韓国のお母さんから教わった、料理が美味しくなる小さな手仕事|いりこの下処理と食材を大切にする暮らし」

 

韓国・全州でオモニと暮らしていた頃、私は料理のレシピだけではなく、食材との向き合い方をたくさん教えてもらいました。

今振り返ると、オモニの料理がおいしかった理由は、特別な調味料や難しい技術だけではありません。

毎日の小さな手仕事を、とても丁寧にしていたからだと思います。




アサリは買った日に下処理して冷凍する

ある日のこと。

オモニが市場から買ってきたアサリを、家に着くとすぐに塩抜きしていました。

そして、そのまま冷凍保存。

初めて見た私は驚きました。

「冷凍しておくんだ……」

と思ったのを覚えています。

でも、これがオモニの料理を支える知恵でした。

テンジャンチゲ(韓国の味噌鍋)を作る時には、冷凍しておいたアサリをそのまま鍋へ。

いつでも旨みたっぷりの出汁が加わり、忙しい時でも本格的な味になります。

料理は、その日に全部準備するのではなく、未来の自分を助ける準備をしておく。

そんな暮らしの知恵を教えてもらいました。 そのかわり、ストックで冷凍庫はいつもパンパンでした。(笑)


市場のいりこが、家庭の味になるまで

韓国の料理に欠かせないもののひとつが、いりこ(煮干し)です。

オモニは市場へ行くと、ビニール袋いっぱいのいりこを買ってきました。

家に帰ると、テーブルに広げて、ひとつひとつ丁寧に下処理をしていました。

頭を取り、はらわたを取り除く。

決して急ぐことなく、静かに手を動かす姿。

その姿を見て、私は「料理って、こういう時間も含めて家庭の味になるんだな」と感じました。当時の私は韓国語が分からずオモニとあまり言葉は通じませんでしたが、こういう時間が家族のきずなを深めてくれたと思います。


処理したいりこは、2つのタッパーに分けて保存していました。

ひとつは料理の出汁用。

もうひとつは、そのまま食べる用。 これもきちんとフライパンで乾煎りし、生臭さを飛ばしていました。今思えばアボジ(義父)が味にうるさいタイプだったようです。オモニはアボジをとても愛していました。やはり料理は愛なのですよね。


そのまま食べるいりこも、韓国の味

家族たちは、下処理したいりこをそのままおやつのようにも食べていました。

コチュジャンをつけたり、醤油を少しつけたり。

ポリポリとした食感で、朝ご飯の箸休めや小腹が空いた時にもぴったり。


オモニの手仕事が、今の私につながっています


オモニがしてくれることは、私にとって何でもごちそうでした。

市場で選んだ食材を大切に扱うこと。

少しの手間を惜しまないこと。

家族のために準備をしておくこと。

そんな姿を見てきたから、私も今ではいりこが大好きになりました。

頭を取り、はらわたを取り、丁寧に下処理をする時間も楽しめるようになりました。

いりこから取る出汁の香りは、私にとって韓国で過ごした時間を思い出させてくれる大切な味です。

料理は、ただお腹を満たすものではなく、大切な人を想う気持ちが込められているもの。

オモニから受け継いだ小さな手仕事を、これからも大切に伝えていきたいと思います。

コメント